9月16日(金)は「食生活が健康を支える~食べてしゃべって元気な暮らし」をテーマに、大妻女子大教授の川口美喜子先生をお迎えしました。
川口先生は大学教員として管理栄養士を育成する傍ら、管理栄養士として社会活動を積極的に進めています。また、がん患者に「食べる喜び」を伝える「がん病態栄養専門管理栄養士」の先駆け的存在で、食事も患者を支える重要な要素だからこれを軽視してはいけない、と主張。多くの患者・家族、医療者を対象にした講演会や研修会などで提言を続けてきました。
そんな川口先生をアビスタにお呼びするのは昨年に続いて2回目。受講者の皆さんと会うなり、先生は「我孫子の人たちはみんな仲がいいですね」を連発。今日の授業を楽しみにして我孫子駅に降り立ってくれたようです。
授業の冒頭はご自身の生い立ちから。島根県山間部の奥出雲町亀嵩に育った子ども時代の生活を紹介。亀嵩は厳しい豪雪地帯で有名な米どころです。お父上が作り続けた自慢の「仁多米(にたまい)」で、食べることを徹底的に教えられ鍛えられて育ったそうです。
やがて苦学して栄養学を修め、大学教員として勤務しながら新宿に「人情保健室」を開設し、市井の人々との交流を重ね、来室するたくさんの人々の健康を、食を通じて支えてきました。「栄養」の普及・支援を実践してきた数多くのエピソードが紹介されていきます。
「人が笑顔になるのは美味しい食事のとき」「食の楽しみという原点から生活を支援」という考えを起点に、「バランスマット」を用いて、必要エネルギー量、必要食品、たんぱく質のとり方の工夫、調理方法、調理器具などをたくさんの人々に紹介してこられました。フレイルを予防するために、楽しく美味しく調理し食べることを日常から体感できる生活をしてほしいと強調されました。
そして、高齢者の「食べられない」という状態は日常の生活から始まります。「食べられない」が招くリスクによって身体機能(咀嚼・消化管・内分泌・活動量)が低下して身体は変化、やがて栄養障害に陥るのです。
そこで、「食べる」を弱らせない食べ方・暮らし方を知ってほしいと考え、フレイル予防や疾患コントロールのための食事スタイルを示す「バランスプレート」を発案し製作。たくさんの人々が活用しているそうです。
栄養バランスのとれた食事に努めても、老いの苦しみや喪失のつらさはどうしようもなくやってきます。孤立を遠ざけるためにも「食べる」と「しゃべる」を決して閉ざさないようにするため、互いにつながり合うことがとても大切です。今日の受講者の皆さんも、このお仲間同士で一緒に食べる喜びを共有していかれるようにと、川口先生は強く期待されていました。
皆さんがそれぞれの環境で「食べる喜び」を支え続けることができるように、今後も笑顔を保つ食事を提案し続けたいと、先生自身も決意と希望を述べて授業を終えました。